LIVE TIME REPORT

 AP BANG! 東京環境会議vol.1 “TOKYO CREATORS MEETING”、2日目。昨日から冬の寒さがぶり返しずいぶんと冷えこんでいたが、会場である新木場StudioCoastの周辺では、開場を待つお客さんたちが早くから長い列を作っていた。そして予定よりも少し遅れて扉が開くと、みんな足早にフロアへと向かっていった。

 本日のオープニングを飾るGUEST BAND ACTは、銀杏BOYZ。メンバーが次々とステージに現れると、満員のフロアからは「峯田ー!」「お前に会いに来たんだ!」という怒号のような野太い声が飛び交う。そんな中上半身は裸、目のまわりを黒く塗ったパンダのような顔で峯田が登場。「チヒロちゃん、あなたと別れて6年が経ちました・・・」という、銀杏ファンにはおなじみの独白でステージは始まった。一曲目に披露した“東北新幹線はチヒロちゃんを乗せて”は、メロウなギターメロが印象的な新曲。が、続く“BABY BABY”、“no future no cry”では唾を吐き、ギターを放り投げ、でんぐり返ってのたうち回る、なんでもアリのパフォーマンスに客席も一気にヒートアップ。次から次へとダイヴの嵐が巻き起こっていった。
「小林武史さんには夢の中で一度会っただけ」と言って場内を湧かせた峯田だが、こんなMCもあった。
「僕は山形の出身で、親父は電気屋をやっていた。(中略)小さい頃、親父にスクーターのかごにのせられて、よく夕陽を見に行った。ただぼーっと、すごくでっかい夕陽を見てたんだ」。そして鬼気迫る表情で、<君の首を絞めたよ 君の首を絞めたよ>と絶叫した“光”。まさに強烈な興奮を残したステージだった。
「(このイベントに)声をかけてもらって、もちろん嬉しかったです。一方で自分たちの役割っていうのもわかって。だから自分たちが普段やっていること、そのままをやりました」(峯田)。

銀杏BOYZ
1 東北新幹線はチヒロちゃんを乗せて
2 BABY BABY
3 no future no cry
4 光

 ここで、ステージは暗転。壇上に上がった小林武史が、客席に向かって「アメリカの副大統領だったアル・ゴアさんが書いた、『不都合な真実』っていう本があるんだけど、読んだ人いる?」と問いかけるが、手を上げた人はまばら。「映画化もされてるんだけど、これからその映画『不都合な真実』の一部を見てもらうからーー」。
昨日と同様、ACTの合間には、ステージ後方のスクリーンに様々な映像が映し出される。インタヴューや映画のダイジェストやアニメーションーー、その映像の中から、オーディエンスはたくさんのことを“知る”ことができる。実際、来場者の多くが、アル・ゴアという名前と、「不都合な真実」というタイトルを覚えただろう。このイベントは、その“知る機会を得る”ためのものなんだと思う。
映像の中で関心をもたれていたのは、おそらく本イベントに関わっているクリエイターたちのアイディアが詰め込まれているであろう、“環境”と“欲望”をキーワードにしたコミカルでシニカルな短いアニメーションであった。たとえば、ミキサーに“環境”と“欲望”という文字を入れてスイッチをいれると、シェイクされて爆発し何も残らなかったり、とか。紙相撲で“環境”と“欲望”を闘わせると、“環境”を倒した後に“欲望”も倒れてしまったり、とか。ほんの数秒のアイキャッチだが、だからこそ何かが心にひっかかりを残す。こういったキャッチーな仕掛けで環境問題をアピールするやり方は、日本ではなかなかお目にかかれないのではないだろうか。

 続いてBank Band Trinityが登場。もちろん昨日と同じメンバーが並んでいる。そして、今日最初にステージに立ったヴォーカリストは、連日の出演となるKREVAだ。“音色”の美しいメロディでしょっぱなからオーディエンスを酔わると、客席からは<愛してんぜ 音色 YOU’RE MY BABY>の大合唱が巻き起こる。そして「いきなりゲストを紹介しちゃおうかな。シンガー、sonomi!」。元気にステージに飛び出してきた赤いドレス姿のsonomiと、赤いパンツ姿のKREVAが絶妙に掛け合う”ひとりじゃないのよ”。そして、メロディアスなナンバーにのせてポジティブなエールを送る、KREVAの真骨頂ともいうべき新曲“アグレッシ部“で、オーディエンスはKREVAのコールにしっかりと応えていた。

KREVA
1 音色
2 ひとりじゃないのよ(ゲストSONOMI)
3 アグレッシ部

「素晴らしい才能に出会いましたーー」という小林武史の言葉に導かれて登場した絢香。「すごく緊張しています」と何度もMCで繰り返していたが、その堂々たる歌いっぷりは、オーディエンスを圧倒。最後に、小林武史の美しいピアノにのせて、みんなが待ち望んでいたあの壮大なバラード”三日月”を曇りのない声で歌いきった。
 昨日に引き続いてのパフォーマンスだったが、「昨日よりも、今日の”三日月”のほうがいいね(笑)。やるたびに、どんどんうまくなるアーティストですね」と、小林。小さな身体に秘めた圧倒的なパワーと存在感をじゅうぶんに感じさせるアクトだった。

絢香
1 ライラライ
2 Peace loving people
3 三日月

 ここでBank Band Trinityは小林武史を残していったん退場し、代わりにチェリストが登場。ステージに現れたのは、ブルーのミニドレスに身を包んだ鬼束ちひろだ。シーンを離れてから約2年、今日は彼女の復帰ステージでもあるから、その一挙一動を見逃すまいとするオーディエンスの視線も熱い。
 が、1曲目“月光”で、歌い出しとともに彼女が右手を振りあげた瞬間――、フロアにいた人たちはみな息をのみ、大げさな表現でもなんでもなく、彼女の世界に引き込まれて身動きできなくなってしまった。続けて鬼束は新曲「Magical World」を歌い、一切のMCを挟まずに、最後は復帰シングル「everyhome」をピアノだけで歌い上げた。ステージを終え客席に向かって深々とお辞儀をした鬼束が、後ろに下がりしなに小さく躓くと、その瞬間、場内の緊張がふっととけた。恥ずかしそうに袖に向かって小走りにかけていく鬼束に、我にかえったオーディエンスが大きな拍手を送る。彼女のマジックが、ブランクを経ても健在であることを実感させられたステージだった。

鬼束ちひろ
1 月光
2 Magical World
3 everyhome

 ここでステージは前半終了。トークセッションとなり、江守正多博士を講師に、小林武史、KREVA、絢香の3人が生徒役ということでステージに上がって、環境破壊による温暖化についてのレクチャーが行われた。スクリーンに映し出される世界地図には、上昇を続ける地球の気温や北極・南極の氷解を示唆するデータが映し出される。フロアにいるオーディエンスは、床にぺたんと座ってレクチャーに聞き入っている。

 そして後半戦の幕を切っておとしたのは、AIR。スリリングなギターにのせて、まず“liberal”を披露。<自分の指の小さな傷の痛みの方が、何百万の 人々の死より心配だといいたそうな顔色に>、まるで今日のイベントのためのような曲であるが、AIRはデビュー以来一貫して、こういったメッセージ性の強いリリックを歌ってきたミュージシャンなのである。MCでは「いつかこの地球の土に還って、そしてまた次に生まれてくるときにも、『この地球に生まれたい』と思えるように」という、真摯なメッセージを残してくれた。
 終演後のAIRが、こう語ってくれた。「環境や教育は、すべてにおいての課題となる問題です。人間が成しうることのできる文化、そして音楽、こういった力から、僕も音楽家のはしくれとして世の中に訴えていきたいと思います」。

AIR
1 LIBERAL
2 LAST DANCE
3 WALK THIS WAY

「当代きっての人気者が登場です」、小林武史のその一言で場内が大きく湧き、ステージに向かって詰め掛けるファンの姿も。待ってました!の倖田來未は、どんな衣装で登場するのかと思えば、肩を出したベージュのロングドレスという意外にもシックな装いで姿を現した。そしてファンの間でも人気の高い名バラード”Candle Light”をしっとりと歌いあげると、客席ではペンライトを掲げたファンたちが、リズムに合わせてライトをゆっくりと揺らしていた。そんな余韻が残る中、へヴィなギターのイントロで一気に温度を上げて、 2曲目の“人魚姫”へ。倖田はスカートの裾を大胆にはためかせながらステージを縦横無尽に動き、踊る! オーディエンスを興奮の渦に巻き込んだ。
 ここでMC。「小林さんから薦めれて『不都合な真実』を読んだら、そこにはこれまで目を背けていた”真実”がたくさん書かれてたんです」という彼女は、素直な言葉でMCを綴った。
「私もお風呂に入るとき、ついシャワーを出しっぱなしにして水の無駄使いをしてました。でもこれから気をつけようと思います。ここにいるみんなも、ひとりひとりが少しづつ水の節約をすれば、すごくたくさんの水を節約できるはず!」。そんな彼女からのメッセージに、場内はあたたかい拍手で応えていた。
 そしてラストは“キューティーハニー“。小林武史が「ぜひこの曲をやって欲しかった」とステージで言っていたが、お約束の「ハニーフラッシュ!」もバッチリ決まって、オーディエンスを容赦なく盛り上げた。

倖田來未
1 Candle Light
2 人魚姫
3 愛証
4 キューティーハニー

 ところで、今回の“AP BANG!”にSTUDIO COAST(通称:ageHa)を選んだ理由を、小林武史は公式HPで明かしている。“ageHa”は正しくは新木場StudioCoastのイベント名であるが、この名前は小林武史が音楽プロデューサーを務めた映画「スワロウテイル」(1996年公開)のヒロイン“アゲハ”に由来しているのだとか。その話を聞いて、小林の中で何かが「カチッとつながった」らしい。その「スワロウテイル」にヒロインの母親役として主演したのが、CHARA。この夜、CHARAがライヴの最後に登場したのは、間違いなく必然だった。
 やんちゃな妖精のような、白いドレス姿で現れたCHARAは、軽快なビートの“世界”でオーディエンスを弾ませた後、「タ・ケ・シ、タ・ケ・シ」と自ら“武史”コールで観客を煽ったりと、貫禄のステージングで場内を盛り上げる。最後は“o-ri-on”では愛に満ちた歌声を場内に響かせ、集まっていた人々をやさしい気持ちで満たしてくれた。

CHARA
1 FANTASY
2 世界
3 o-ri-on

 ここで終演を迎えるのかと思いきや、今日もスペシャルサプライズが用意されていた。
「くーちゃんと、歌っていい?」とCHARAが呼びかけると、ステージ袖から現れた倖田來未も「CHARAちゃんと歌っていい?」。オーディエンスからも、「CHARAちゃーん」、「くーちゃーーん」という歓声が上がる。流れてきたのは、小林武史の名曲、YEN TOWN BANDの“Swallowtail Butterfly〜あいのうた”。ゆったりとしたリズムにたゆたうように、オーディエンスが揺れる。
 こうして“AP BANG!“二日目の夜は、二人の歌姫による夢のステージで幕を閉じた。

CHARA×倖田來未
あいのうた

 音楽が、今をときめくクリエイターたちとタッグを組み、クリエイティブかつエンターテイメントな方法で社会に対してアプローチをしていく。レクチャーに耳を傾けていた今日のオーディエンスを見るかぎり、そのやり方は的を射ていたと思う。
 環境を破壊してきたのは、人間の欲望である。そしてそれを知った私たちがすべきことも、自ずと示されている。
 インタヴュー映像に登場する山本良一教授(東京大学 生産技術研究所)は、こう語っていた。「人間の欲望は止めることはできない。でも、“赤い欲望”を“緑の欲望”にすることはできるんです」。
 こうして、“AP BANG!“の二日目は幕を下ろした。今日のステージから受け取ったたくさんの情報とメッセージを、集まった人々は大切に持ち帰ったに違いない。

TEXT BY 黒木 里恵(FACT

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